ドローン外壁調査とは|方法・わかること・12条と報告書

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外壁調査

ドローン外壁調査とは|
方法・わかること・12条と報告書

2026年10月31日

ドローン外壁調査は、可視光カメラと赤外線カメラを積んだドローンで建物の外壁を撮影し、タイルやモルタルの浮き、ひび割れ、欠けなどを足場を組まずに調べる方法です。建築基準法第12条の定期報告では、令和4年の告示改正で「無人航空機による赤外線調査であって、テストハンマーによる打診と同等以上の精度を有するもの」が、打診以外の調査方法として明確化されました。ただし、天候や壁の向き、仕上げ材によって赤外線が使えない部分があるため、打診などと組み合わせて計画することが前提になります。

この記事では、調べ方、わかることと限界、12条の定期報告での位置づけ、報告書に載る内容、費用の考え方、依頼から報告書までの流れを順に説明します。

2つのカメラで外壁を撮る

赤外線カメラで浮きの候補を探す

赤外線カメラ(専門の資料では「赤外線装置」)は、外壁の表面温度の分布を画像にします。タイルやモルタルが下地から浮いている所は、裏側にすき間ができるため、日射を受けたときの温まり方が健全な所と違ってきます。この表面温度の差から浮きの位置と範囲を推定するのが赤外線調査です。温度差が生まれる仕組みは「赤外線外壁調査の仕組みと精度」で詳しく説明しています。

この記事では、一般財団法人日本建築防災協会が設置した委員会がまとめた「定期報告制度における赤外線調査(無人航空機による赤外線調査を含む)による外壁調査ガイドライン」(令和4年3月)を、「ガイドライン」と呼びます。国土交通省が、打診と同等以上の精度かどうかの判定に参照するよう示している資料です。

押さえておきたいのは、赤外線調査が日射などによる外壁の温度の動きを利用する「受け身」の方法だということです。ガイドラインの解説は、調査日の天候、壁面の濡れ、日射の量と蓄熱の時間、タイルの下地や種類が検出の精度に大きく影響し、赤外線装置の性能が上がっても条件を考えずに使えば意味をもたないと書いています。熱画像に出るのは温度の違いであり、浮きそのものではありません。打診の結果と照らし合わせて、はじめて「浮き」と判定できます。

可視光カメラでひび割れや欠けを記録する

可視光カメラは、ひび割れ、欠け、白華(白い析出物)、錆汁、シーリングの破断など、目で見てわかる変状を記録します。ガイドラインも、可視画像を組み合わせると熱画像では得られない情報(壁面の汚れ、補修跡、陰影など)が明確になり、判定がより正確になるとしています。

細かなひび割れには限界があります。撮影距離は建物や周囲の状況で決まり、当社の場合は壁面から概ね5〜25mです。この距離では、0.2mm程度の細いひび割れは写ることがあっても、確実な検出や幅の判別までは約束できません。

ドローンは止まって撮る

ガイドラインは、ドローンによる赤外線調査では、ドローンをホバリングさせて静止した状態で静止画を撮り、可視画像も同時に撮ることとしています。地上から撮る赤外線調査と比べたドローンの利点は、壁面に正対して撮れることと、壁との距離を調整しやすいことの2つです。一方で、天候や気温の較差、風、仕上げ材や下地、周辺の建物や樹木、軒裏や出隅・入隅などの形状による制約は、ドローンを使っても同じように受けると整理されています。

わかること・わからないこと

ドローン外壁調査で得られる情報と、その限界を一覧にしました。

項目わかること苦手なこと・わからないこと
タイル・モルタルの浮き条件がそろえば、熱画像の温度差から浮きの位置と範囲を推定できる北面など日射が少ない面、軒裏、庇の鼻先、雨樋や柱の影になる所、窓枠の近く、出隅・入隅は検出が難しい
下地・仕上げ材一般的なコンクリート下地のタイル張り、モルタル塗りALC・押出成形セメント板(ECP)・木摺ラス・鉄骨ラスを下地とするタイル等の浮き調査には、ガイドライン上、赤外線調査を適用できない。タイル先付けPC版も浮きの検出は困難。光沢や凹凸の強いタイルは判定が難しい
ひび割れ・欠け・白華可視画像で位置と広がりを記録できる細いひび割れの幅の判別。0.2mm程度のものは確実な検出を約束できない
撮影できない面―隣の建物との間が狭い面や、障害物の多い面は撮れないことがある。打診など別の方法で調べる

ALCや押出成形セメント板を使った外壁は、とくに注意が必要です。ガイドラインの解説は、タイルの下地の熱容量が小さい板や、中空のある板状の材料では技術的に赤外線調査が難しいとして、これらを下地とするタイル等の浮き調査には赤外線調査を適用できないとしています。これは板の上に張ったタイル等の浮きを調べる場合の話で、板そのものの劣化を調べる調査とは別です。浮きを調べる方法は、仕上げと工法に応じて、打診や、所定の条件を満たす引張接着試験などから選びます。依頼の前に図面の仕上げ表などで下地を確かめておくと、計画の手戻りを防げます。

どんなときに使われるか

ドローン外壁調査がよく使われるのは、次のような場面です。

  • 12条の定期報告、とくに10年ごとに必要になる外壁の全面的な調査
  • 大規模修繕の前に、劣化の場所と範囲をつかむための一次調査
  • 漏水が起きたときに、外壁の状態を確かめる一次調査
  • 改修工事が終わった後の確認

ガイドラインは12条の定期報告制度のために作られたものですが、12条以外の目的でも、浮きをどの精度で拾いたいのかを決めるときの物差しとして参考になります。

12条の定期報告と10年ごとの全面打診等

定期報告とは

建築基準法第12条第1項により、政令で定める建築物や特定行政庁が指定する建築物の所有者(所有者と管理者が異なる場合は管理者)は、定期的に建物の状況を一級建築士・二級建築士・特定建築物調査員に調べさせ、その結果を特定行政庁に報告しなければなりません。報告の時期は、用途・構造・延べ面積などに応じて、おおむね6か月から3年までの間隔で特定行政庁が定めます(建築基準法施行規則第5条)。対象になるかどうか、何年ごとに報告するかは自治体によって違うため、所管の特定行政庁に確認してください。

外壁について求められる調査

調査の方法は、平成20年国土交通省告示第282号で定められています。外壁の「タイル、石貼り等(乾式工法によるものを除く。)、モルタル等」は、次の2段構えです。

毎回の定期調査10年を超えて最初の定期調査
調べる範囲開口隅部・水平打継部・斜壁部などのうち手の届く範囲を打診等で、その他の部分は目視等で確認。異常があれば全面打診等落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全面打診等
いつ定期報告のたび竣工後、外壁改修後、または全面打診等の実施後10年を超えたとき
除かれる場合―3年以内に実施された全面打診等の結果を確認する場合、3年以内に外壁改修等が行われることが確実な場合、別途歩行者等の安全を確保するための対策を講じている場合

告示の「打診等」には、無人航空機による赤外線調査であって、テストハンマーによる打診と同等以上の精度を有するものが含まれると書かれています。国土交通省の技術的助言では、地上に設置した赤外線装置による調査や、一定の条件を満たす有機系接着剤張りタイルの引張接着試験も「打診等」に含まれるとされています。10年ごとの全面打診等の考え方と、足場を使う場合との違いは「外壁の全面打診は10年に1度」で解説しています。

調査方法の「目視」は、令和6年国土交通省告示第974号により「目視又はこれに類する方法」(目視等)に改められ、令和7年7月1日に施行されました。この部分は、令和6年6月28日の国土交通省の事務連絡で、公布日から先に運用してよいとされています。同じ事務連絡では、「これに類する方法」として、ガイドラインに則った赤外線調査のほか、調査する人が自らの目視と同等以上の情報が得られると判断した方法(双眼鏡、赤外線装置、可視カメラなどの検査器具を使う方法)が挙げられています。

令和4年の告示改正で明確化されたこと

令和4年国土交通省告示第110号は令和4年1月18日に公布され、外壁調査に関する改正規定は同年4月1日に施行されました。国土交通省の技術的助言によると、平成29〜30年度の建築基準整備促進事業などで検討した結果、一定の実施要領に則れば、赤外線装置を搭載した無人航空機による調査で打診と同等以上の精度で浮きを検出できることがわかったため、打診以外の調査方法として明確化したものです。

告示が求めているのは、あくまで打診と同等以上の精度です。ドローンで撮れば何でも12条に使えるわけではありません。国土交通省は、その精度の判定にあたってガイドラインを参照するよう示しています。「同等以上の精度」の確かめ方は「ドローン赤外線と打診の精度の比べ方」で、12条での使い方の注意点は「12条点検でドローン赤外線調査は使えるか」で説明しています。報告を受け付けるかどうかの最終的な判断は、所管の特定行政庁の運用によります。

調査者の役割

12条の調査をするのは、一級建築士・二級建築士・特定建築物調査員です。ガイドラインではこの資格者を「外壁調査実施者」と呼びます。外壁調査実施者は赤外線調査の全体をまとめ、調査計画書の内容を確かめ、熱画像の撮影と分析をする「赤外線調査実施者」の判定結果をもとに「著しい浮き」の有無を確かめて、外壁調査結果報告書を作ります。判定と報告に責任を持つのは、この資格者です。ドローンの操縦の資格と、12条の調査者の資格は別のものです。誰に何の資格が要るかは「ドローン外壁調査に資格は要るか」で整理しています。

ガイドラインに沿った調査の進め方

ガイドラインは、ドローンによる赤外線調査を次の6つの段階で組み立てています。

  1. 適用条件の把握と飛行の可否の検討:気象、建物(タイルの種類、形状)、周辺環境(近くの建物からの放射熱など)、撮影条件(装置、角度、距離)を把握し、ドローンが安全に飛べるかを確かめます。
  2. 事前調査:設計図書などによる予備調査に加えて、現地で日射の状況、調査できる時間帯、構造・形状と仕上げ材、近隣の状況を確かめ、打診と照らし合わせる場所を決めます。飛行に必要な書類の作成と申請もこの段階です。
  3. 調査計画書の作成:赤外線で調べる箇所と別の方法で調べる箇所、使う装置と機体、安全管理を計画書にまとめ、外壁調査実施者が確認します。
  4. 調査の実施:撮影を始める前に、同じ部位で打診と赤外線調査をして、浮きが熱画像で検出できることを確かめます。その後、計画どおりに撮影し、撮った熱画像はすべて保存します。
  5. 熱画像による浮きの判定:立地や仕上げ材、撮影時の環境を整理したうえで、反射などの影響を取り除きながら分析し、浮きを判定します。
  6. 報告書の作成:次の章で説明する項目をまとめます。

4の「打診との併用による確認」が、精度を確かめるうえでいちばん大事な工程です。解説には、打診で浮きと判断した箇所が熱画像で検出できない場合は、検出できるまで赤外線調査を行わないと書かれています。

報告書に何が載るか

ガイドラインは、ドローンによる赤外線調査の報告書に入れるべき項目を定めています。

誰が作るか載せる項目
赤外線調査実施者建築物の概要(所在地、構造・階数、竣工年、仕上げ材、補修歴)、調査の実施体制と資格、調査日と天候・環境条件、赤外線装置の仕様・性能、赤外線で調べた箇所と別の方法で調べた箇所、適用条件のチェックリスト、打診と照らし合わせた範囲と結果、浮きと判定した箇所を示した外壁調査結果図、熱画像と可視画像
ドローン調査安全管理者ドローン飛行計画書(調査の概要、調査方法、使用機体などの仕様、安全管理、添付資料)
外壁調査実施者外壁調査実施者の氏名、資格名と資格者番号、調査対象の部分、告示の判定基準に基づく判定

これらは一式で建物の所有者などに渡され、所有者などが定期調査の結果を特定行政庁に報告します。報告書を受け取ったら、浮きの位置が立面図の上でわかるか、熱画像と可視画像が同じ場所で対応しているか、赤外線で調べられなかった所がどこで、どう補ったのかが書かれているかを確かめてください。

費用の考え方

ドローン外壁調査の費用は、足場やゴンドラの仮設がいらない分、全面打診を足場で行う場合とは組み立てが違います。見積の金額を左右するのは主に次の点です。

  • 外壁の面積:撮影、解析、報告書の量がほぼ面積で決まります。
  • 赤外線で調べられない部分の調査:撮影できない面や、下地・仕上げ材の都合で赤外線が使えない部分は、ロープアクセスなどによる打診などで調べます。この範囲が広いほど費用は上がります。
  • 飛行の許可・承認:場所によっては、その現場のための個別の申請が要ります。
  • 12条の定期報告の調査者(資格者)に関わる費用:一級建築士・二級建築士・特定建築物調査員による計画の確認、結果の判定、報告書の作成などが、見積りのどこまでに含まれるかを確かめます。
  • 移動の距離:遠方では交通費や宿泊費がかかります。

相見積もりでは、単価だけでなく、打診の範囲と方法、報告書に熱画像と可視画像が全部載るか、打診との照らし合わせが含まれるかを同じ条件でそろえて比べてください。一般的な相場と内訳は「ドローン外壁調査の費用相場」に、補助金・助成金の調べ方は「外壁調査の補助金・助成金」にまとめています。

依頼から報告書までの流れ

  1. 相談と資料の共有:図面(立面図、仕上げ表)、前回の調査の結果、補修の履歴をそろえます。下地と仕上げ材がわかると、赤外線を使える範囲を早く見積もれます。
  2. 事前調査と計画:現地で日射や周囲の状況を確かめ、撮影できない面を洗い出し、飛行の許可・承認や建物の管理者・近隣との調整を進めます。
  3. 撮影:ガイドラインの解説は、撮影開始の2時間前から撮影中の天候、最低気温、日中の気温の較差、風速などの条件を示しています。条件が合わなければ延期するため、予備日を見込んでおきます。
  4. 解析と報告書:熱画像の分析には撮影と同等以上の時間がかかると、ガイドラインの解説にもあります。納期は面積と内容によって変わります。
  5. 定期報告:12条の場合は、報告書をもとに所有者などが特定行政庁に報告します。

まとめ

ドローン外壁調査は、飛行・撮影できる範囲の外壁を、足場を組まずに記録する方法です。撮影できない所や赤外線で評価できない所は、現場の条件に応じて別の方法で補います。ガイドラインを参照して打診との照らし合わせを行い、使えない部分を補うことで、12条の定期報告に使う調査として組み立てられます。

当社のドローン外壁調査は、可視光と赤外線のカメラを積んだドローンで撮影し、ガイドラインに沿って実施します。ドローンで撮影できない面や赤外線で判定しきれない箇所はロープアクセス等による打診で当社の調査範囲として補い、変状の位置・可視光写真・赤外線画像を1冊の報告書にまとめます(外壁1,000㎡以下なら調査完了から最短3営業日)。基本調査費は面積に応じて1件30万円(税抜・諸経費10%別・関東圏内)からで、修繕工事は受けず、中立な立場で調査と報告に徹します。

よくある質問

参考にした資料

よくある質問

ドローン外壁調査とはどんな調査ですか?
可視光カメラと赤外線カメラを積んだドローンで外壁を撮影し、タイルやモルタルの浮き、ひび割れ、欠けなどを足場を組まずに調べる方法です。赤外線の熱画像で浮きの候補を探し、可視画像で見た目の変状を記録します。撮影できない所や赤外線で評価できない所は、打診などで補います。
ドローン外壁調査は12条の定期報告に使えますか?
令和4年の告示改正で、テストハンマーによる打診と同等以上の精度を有する無人航空機による赤外線調査が、打診以外の調査方法として明確化されました。精度の判定には、日本建築防災協会が設置した委員会のガイドライン(令和4年3月)を参照するよう国土交通省が示しています。最終的な扱いは所管の特定行政庁の運用によります。
全面打診等は何年ごとに必要ですか?
告示では、竣工後、外壁改修後、または全面打診等の実施後10年を超えて最初の定期調査で、落下により歩行者等に危害を加えるおそれのある部分の全面打診等を行うこととされています。3年以内に外壁改修等が確実な場合などは除かれます。
赤外線で調べられない外壁はありますか?
あります。ALCや押出成形セメント板などを下地とするタイル等の浮き調査には、ガイドライン上、赤外線調査を適用できません。北面や軒裏、光沢や凹凸の強いタイルなども検出が難しく、打診や所定の条件を満たす引張接着試験などで補います。
報告書には何が載りますか?
ガイドラインでは、調査日の天候と環境条件、赤外線で調べた箇所と別の方法で調べた箇所、打診と照らし合わせた結果、浮きを示した外壁調査結果図、熱画像と可視画像などを載せることとされています。12条の場合は、外壁調査実施者の氏名と資格、告示の判定基準による判定も入ります。
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