自治体イベントのドローンショー事例と発注時の確認事項
インプレス総合研究所によると、ドローンショーはこの数年急速に拡大している分野です。自治体のナイトタイムイベントでも、集客の施策として検討される場面があります。ただ、「どのような効果が期待できるか」「何を確認して発注すればよいか」は、判断に迷いやすいところです。この記事では、国内の事例・費用構成・航空法などの規制・発注時の確認事項を、発注する側の視点でまとめています。

国内の事例
自治体の催しで開かれた福山市と檜枝岐村の事例と、参考として大阪・関西万博の例を紹介します。
広島県福山市「カツナリ・デ・ナイト」
福山市・福山商工会議所・福山観光コンベンション協会でつくる福山ビジットアソシエーションが主催する、福山城のイベントです。2025年8月23日の開催では、約300機のドローンが福山の歴史をテーマにした演出を見せ、和太鼓との共演も行われました。主催者側(カツナリ・デ・ナイト事務局)の公式noteによると、イベント全体の来場者数は1万6,000人で、2023年の1万1,000人を上回ったとされています。地域固有の歴史資源をドローンの演出に組み込んだ事例です。
福島県檜枝岐村
福島県南会津地方振興局の発表と福島テレビの報道によると、人口規模の小さな村の秋まつり(檜枝岐秋彩まつり)のフィナーレとして、2026年10月17日に300機のショーが開かれました。県の地方振興局が、過疎地域のイベントを応援する取り組みの一環として開いたものです。大都市や大型施設に限らず、小さな村の祭りでも開かれた事例です。
福山市と檜枝岐村の事例はどちらも、ドローンショーを単独の出し物にせず、城のイベントや秋まつりといった既存の催しに組み込み、地域の歴史や祭りと合わせて見せています。
参考:大阪・関西万博
自治体の催しではありませんが、大規模なショーを長い期間続けた国内の例です。インプレス総合研究所の「ドローンビジネス調査報告書2026」の発表資料では、会期184日間のほぼ毎日、1,000機規模のショーが開かれたと紹介されています。
ギネスワールドレコーズの記録によると、万博の会場では、開幕日に1,749機のドローンで描いた木の空中ディスプレイと、1年間に飛ばしたドローンの数(延べ14万194機)が、それぞれギネス世界記録に認定されています。
効果を測る指標の考え方
具体的な効果として公表されている数字は、現時点では限られています。福山城のイベントのように、主催者側が来場者数の変化を公表している例がある一方、「話題化」「観光資源化」「地域認知の向上」といった効果は数値化が難しく、イベントごとに公表状況も異なります。
自治体として発注する場合は、あらかじめ次のような指標をKPIとして設定しておくと、事後の評価がしやすくなります。
- 来場者数・滞在時間
- SNS投稿数・動画再生数
- 観光サイトへのアクセス流入
- 周辺店舗の売上・宿泊との連動
- 地域ブランドや観光資源の認知度変化
インプレス総合研究所の発表資料では、広告代理店との連携による広告効果・集客予測の可視化サービスなど、ドローンショーをマーケティングに使う動きも進んでいると説明されています。事業者にKPIの設定や効果測定の方法について事前に確認することが有効です。
費用構成と発注の考え方
2026年時点では、公的機関や業界団体が公表した、自治体向けドローンショーの標準的な費用相場は見当たりません。「機体数」だけで価格を比較すると、演出制作、飛行の許可・承認の取得、警備、延期時の対応などの扱いが事業者ごとに異なるため、総額の比較を誤るリスクがあります。
見積もりを取得する際は、次の費目を個別に提示させることが実務上の基本です。
- 機体・照明機器の運用費
- 演出・アニメーション制作費
- 現地下見・飛行計画作成費
- 運航事業者が飛行の許可・承認を受けるためにかかる費用
- 操縦者・監視員・警備員などの人件費
- 観客導線・立入管理・安全対策費
- 会場・電源・通信・保険・交通・宿泊費
- 雨天・強風時の延期または中止対応費
- 花火・音楽・伝統芸能などとの連携費
特に悪天候時の延期・中止条件と費用負担の取り決めは、契約前に必ず確認すべき事項です。
航空法などの規制と発注時の確認事項
国土交通省の解釈によると、ドローンショーで飛ばす機体は、重さ(機体とバッテリーの合計)が100g以上であれば航空法上の「無人航空機」に当たり、屋外での飛行が規制を受けます。所管は国土交通省航空局です。
同じ解釈では、ドローンショーは航空法の「多数の者の集合する催し」に当たります(第三者が入らないよう管理した場所での事前練習などは除かれます)。催し場所の上空を飛ばすには、操縦者の技能証明や機体の認証、包括的な許可・承認があっても、催しごとに日時と場所を特定して国の許可・承認を受ける必要があります。多くのショーは夜間に飛ばし、会場によっては人口集中地区の上空にもかかります。夜間の飛行も人口集中地区の上空の飛行も、航空法の規制の対象です。
国土交通省航空局の審査要領(カテゴリーⅡ飛行)では、催し場所の上空でも、観客(第三者)の上空は飛ばさないことを承認の要件としています。ここでいう上空には、真上だけでなく、機体が落ちるおそれのある範囲も含まれます。そのため、飛行の高さなどに応じた立入禁止の区画を、主催者と事業者で調整して設けます。審査要領は改正されることがあるため、最新の内容を確認してください。
なお、国土交通省航空局が2026年6月2日に改訂を発表した「無人航空機の多数機同時運航を安全に行うためのガイドライン」は、物流やインフラ点検などの無人地帯での目視外飛行が対象で、ドローンショーは対象外と明記されています。ショーの許可・承認で見られるのは、審査要領の催し場所上空の基準などです。
航空法のほかにも、会場が重要施設の周辺にあれば小型無人機等飛行禁止法、公園や河川などを使うなら管理者の許可、警察・消防との調整、使う無線機器の電波法上の扱いなどがかかわります。主催者が自ら行う手続きと、事業者が自社の名義で行う手続きを分けて確認してください。
事業者からは以下の資料を提出させ、最新の法令・審査要領との整合を確認してください。
- 飛行区域と観客区域の図面
- 機体数・飛行高度・飛行時間
- 運航責任者・操縦者・監視者・補助者の役割分担
- 通信途絶・機体異常・強風時の中止基準と緊急着陸場所
- 立入管理と観客の退避計画
- 飛行前点検・訓練記録
- 事故発生時の連絡体制
- 保険加入状況
- 許可・承認を受ける者(名義)の明示
主催者として契約書・仕様書に明記すべき事項は次のとおりです。
- 誰が飛行の許可・承認を取得するか
- 主催者と運航事業者の責任分界
- 悪天候時の延期・中止判断の基準と手順
- 中止時の費用負担
- 事故・物損・第三者損害の補償
- 観客や周辺施設への安全対策
- 撮影・配信映像・個人情報の取り扱い
多数機を自動飛行させる構成であっても、事業者側の安全管理責任がなくなるわけではありません。自治体側も許認可の取得状況を確認し、主催者としての責任範囲を明確にしておくことが不可欠です。
市場の動向
インプレス総合研究所の「ドローンビジネス調査報告書2026」の発表資料によると、国内ドローンビジネス市場は2025年度に4,973億円(前年度比13.8%増)と推測されています。同じ発表資料の分野別の図表では、ドローンショーの市場規模を2024年度20億円、2025年度46億円(推計)としています。公的機関や業界団体による国内のショー市場の金額は見当たりません。
インプレス総合研究所の発表資料は、大阪・関西万博で毎晩のように続いたショーなどを挙げて、ドローンショーが「エンタテインメントとして社会的に大きく定着」したとしています。
まとめ
自治体の催しでドローンショーを取り入れた例として、福山城のイベントと檜枝岐村の秋まつりを紹介しました。どちらも、既存の催しにショーを組み込んでいます。
発注を検討する際には、機体数だけで比較せず、演出制作、飛行の許可・承認、警備、悪天候時の対応を含めた費目別の見積もりを取得することが基本です。また、催し場所の上空の飛行には催しごとに国の許可・承認が要り、審査要領では観客(第三者)の上空を飛ばさないことが承認の要件です。許可・承認を誰が受けるかと責任分界を契約書に明記し、主催者としての安全管理責任を事前に整理しておくことが、円滑な実施につながります。
Withnologyについて
株式会社Withnology(ウィズノロジー)は、東京都渋谷区に本社を置くドローンの会社です。主な業務は、ドローンによる外壁調査、天井裏やダクトなどの狭隘部点検、送電インフラ向けの空中延線と点検です。ドローンエンタメのご相談も受け付けています。
- 国土交通省の包括的な飛行許可・承認を取得しています。
ご相談は無料です。






